
ブランジーノ・アル・サーレ — イタリアの塩釜焼きスズキ
ブランジーノ・アル・サーレは、スズキを丸ごと塩に埋めて焼くイタリアの定番料理です。粗い海塩を卵白で湿らせて魚を覆い、200°Cで30分。焼き上がったら食卓で塩の殻を割ります。塩は硬いドームになり、オーブンの中を密閉した蒸し器に変えてしまう。魚は自分の水分と、レモンやタイム、ローズマリーの香りの中で火が通ります。これだけの塩を使っても身は塩辛くなりません。皮とうろこが塩を通さないからです。地中海の魚料理をいちばん簡素な形にしたもので、たんぱく質が多く、グルテンも含まず、ケトにも向きます。オーブンに入れてしまえば手はかかりません。実働10分、焼き時間30分。700gの魚2匹で4人分です。
材料
- 2 尾スズキ(丸ごと)
- 2 kg粗い海塩
- 3 個分卵白
- 2 個レモン
- 8 本新鮮なタイムの枝
- 4 本新鮮なローズマリーの枝
- 20 g新鮮なパセリ
- 4 かけにんにく
- 30 mlエキストラバージンオリーブオイル
- 1 ひとつまみ黒こしょう
作り方
- 魚を用意する。魚屋でスズキのわたを抜いてもらい、うろこと頭と尾はそのまま残してもらう。うろこは皮とともに、塩から身を守るもう一枚の壁になる。冷水で洗い、腹の中まで水気をしっかりふき取る。オーブンは棚を中段にセットして200°Cに予熱する。
- 腹に詰める。レモン1個を薄い輪切りにする。魚1匹につき、タイム4本、ローズマリー2本、パセリを半量、つぶしたにんにく2かけ、レモンの輪切り4〜5枚を詰める。黒こしょうをひとひねり。塩は入れない。外側の塩の殻で十分に味がつく。熱が回るよう、ゆるく詰めること。

- 塩を混ぜる。大きなボウルに卵白を入れ、フォークで30秒ほど泡が立つまで混ぜる。角が立つまで泡立てる必要はなく、ほぐれれば十分。粗い海塩を加え、手で全体が均一に湿るまで混ぜる。握るとまとまる、湿った砂のような状態が目安。乾いていれば冷水を大さじ1〜2、湿りすぎていれば塩を足す。
- 塩の土台を作る。縁のある天板にオーブンシートを敷く。塩の3分の1を、魚よりひと回り大きい楕円形に厚さ1.5cmで2か所広げる。その上に魚を置き、残りの塩をかぶせてしっかり押さえ、完全に包み込む。隙間があってはいけない。そこから蒸気が抜けて身が乾く。

- 200°Cで30分焼く。殻は淡いアイボリー色になり、岩のように硬くなる。いちばんの目安は時間で、700g前後の魚2匹なら30分。もっと重い魚は長くかかる。温度計があれば、殻の上から頭の後ろのいちばん身の厚いところに刺す。63°Cで焼き上がり。最終的な確認は殻を開けてから。身が白く不透明で、骨からほろりとはがれればよい。中骨のあたりがまだ透き通っていたら、オーブンに戻して5分焼く。
- きっかり5分休ませる。それ以上おくと塩が少しずつ身に入り、塩辛くなる。天板ごと食卓に運び、包丁の背か木べらで塩のドームを強くたたく。小気味よい音とともに殻が割れる。上半分をひとかたまりで持ち上げ、残った塩の粒は刷毛で払う。
- 食卓で身をはずす。上側の皮をひと息にはがす。塩がくっついたまま気持ちよく取れる。フィッシュターナーで上身を持ち上げ、温めた皿へ。中骨と頭をひとつながりで持ち上げ、下身も同じように移す。2匹目も同じ手順で。

- 身にエキストラバージンオリーブオイルをたっぷり回しかけ、もう1個のレモンを絞り、黒こしょうをひとひねりして仕上げる。温めた皿ですぐに出す。ローストポテト、フェンネルとオレンジのサラダ、焼き野菜がよく合う。身をはずしてからは冷めるのが早いので、待たせないこと。
よくある質問
作り方さえ間違えなければ、塩は身まで届きません。理由は二つあります。ひとつは魚の皮が天然の壁になること。うろこを残すのは、その上にもう一枚守りを重ねるためです。もうひとつは、塩の殻が土窯のように働くことです。熱が入ると殻は硬く密閉され、魚自身の水分で内側が蒸気で満たされます。塩が触れているのは皮の表面だけで、身には届きません。ですから仕上がりは繊細で、海の香りがして、ちょうどよい塩加減になります。もし塩辛くなったなら、よくある原因は、焼いている途中で殻が割れた、焼き上がってから5分より長く塩の中に置いた、粗塩ではなく細かい塩を使った、のいずれかです。
ブランジーノ(イタリア語)、ルー・ド・メール(フランス語)、ヴォルフスバルシュ(ドイツ語)、ヨーロピアン・シーバス(英語)は、すべて同じ魚を指します。地中海のスズキのことです。一方オラータ(英語ではギルトヘッド・シーブリーム、和名はヨーロッパヘダイ)は別の種類で、頭に金色の斑があり、身がより締まってかすかな甘みがあります。形は似ていて、どちらも楕円形の銀色で700gくらいのものが多いのですが、ブランジーノのほうが柔らかく脂があって繊細な味、オラータのほうが身が締まって甘い、という違いです。塩釜焼きにはどちらも向いていて、イタリアでもスピーゴラ・アル・サーレ、ブランジーノ・アル・サーレ、オラータ・アル・サーレと呼び分けながら同じように作ります。アメリカの市場では「シーバス」という表示がマゼランアイナメを指すことがありますが、これは南極海のまったく別の魚で、丸ごと焼く料理には向きません。ヨーロッパ産のスズキを選んでください。
はい、水だけでも作れます。卵白は必須ではありません。卵白は塩をつなぎ、硬く固まって大きなかたまりではずれる殻にしてくれるので、食卓で割って開けるときに扱いやすくなります。イタリアのレシピには、粗塩だけをそのまま、あるいは少量の水で湿らせて使うものも多くあります。このレシピでは塩2kgに卵白3個分、塩600〜700gに対して卵白1個分ほどです。フォークで軽く泡が立つまで混ぜれば十分で、角を立てる必要はありません。卵白を使わない場合は、塩2kgに冷水100〜150mlを加え、湿った砂のような状態にしてください。
2人分なら1匹700〜900g、4人分なら1.5kgの魚を1匹というのがちょうどよい大きさです。500gを下回ると身が薄いぶん塩が回りやすく、2kgを超えると同じ温度では中まで火が通らないので、180°Cに下げて長く焼く必要があります。目安は200°Cで、700〜800gなら25〜30分、1kgなら30〜35分、1.5kgなら40〜45分。2kgなら温度を180°Cに下げて50〜55分です。正確にやりたければ温度計を使ってください。焼き終わりの5〜10分前に、殻の上から頭の後ろのいちばん身の厚いところに刺します。63°Cで焼き上がりです。温度計がなければ、殻を開けて身を見ます。白く不透明で、骨からほろりとはがれれば火が通っています。塩と魚の重さの比は、大きさが変わっても常に1.5対1で計算してください。
これは焼きたてを出す料理です。塩の殻の中で蒸される効果も、身のみずみずしさも、時間を置けば失われます。ただし下ごしらえは前倒しできます。4時間前までなら、うろこを残したままわたを抜き、レモンとハーブを詰めた状態で冷蔵しておけます。塩と卵白を混ぜたものも、ラップをして同じく冷蔵しておきます。あとは食事の50分ほど前にオーブンを予熱し、魚を塩で包んで30分焼き、5分休ませます。食卓に運んで、客の前で殻を割ってください。この一瞬がごちそうです。付け合わせの定番は、ローズマリーを効かせたローストポテト、柑橘の酸で対比をつけるフェンネルとオレンジのサラダ、夏なら焼き野菜、冬ならトマトを合わせた温かいカンネッリーニ豆。ソースはサルサ・ヴェルデかブール・ブラン、あるいはオリーブオイルとレモンだけでも十分です。ワインはミネラル感のある辛口の白を。サルデーニャのヴェルメンティーノ、カンパーニアのファランギーナ、ギリシャのアシルティコが合います。赤は避けてください。渋みが海の香りとぶつかります。
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