オクトーバーフェストで食べられているものは、名前の響きより地味です。ブラートヴルストは生の豚肉ソーセージで、買った時点では火が通っておらず、サラミのような塩漬け熟成品ではありません。オバツダは熟れすぎたカマンベールをバターと練り合わせたバイエルンのディップです。ブレーツェルは油脂の少ない生地を結び、焼く前にアルカリ液にくぐらせたもので、パンではなくプレッツェルの味になるのはこの一手のためです。シュニッツェルは薄く叩いた肉にパン粉をつけて焼いたものです。シュペッツレは卵入りのゆるい生地を熱湯に削り落とした柔らかい団子です。シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテは、チョコレートのスポンジとサワーチェリーと生クリームに、本物のキルシュヴァッサーを染み込ませたケーキです。
祭りは九月半ばから十六日間続き、十月の第一日曜日に終わります。この六品にテントは要りません。それぞれに出来を決める一点があり、以下はその話です。
ソーセージは買った時点で生です
ここでつまずく人がいちばん多いところです。ブラートヴルストは腸詰めにした生の豚ひき肉なので中まで火を通す必要があり、強火で中まで火を通そうとすると外側が先に焦げます。
バイエルンの答えは、強火に当てる前に一度ゆでることです。ビールに玉ねぎの薄切り、ローリエ、黒こしょうの粒を入れて二十分、中心をゆっくり温めます。そのあとフライパンを煙が立つほど熱し、色をつけるためだけに三分から四分入れます。それ以上は不要です。この工程を飛ばすと、皮を焦がすか中を生で出すかの二択になります。
→ ブラートヴルスト
温度だけで決まるディップ
オバツダは、そのままでは出せないほど柔らかくなったカマンベールを、バイエルンの宿屋の主人が使い切るために生まれました。熟れすぎたチーズ、バター、少量のクリームチーズ、甘いパプリカパウダー、キャラウェイ、そして混ざる程度のビールです。
火は一切使わないので、変数は材料がどれだけ柔らかいかだけです。チーズとバターは一時間前に冷蔵庫から出しておきます。冷たいバターはチーズに練り込めず、黄色い粒として残り、あとからいくら混ぜても直りません。オレンジ色はパプリカパウダーの色で、チーズの色ではありません。
→ オバツダ
生地よりアルカリ液
ブレーツェルの生地は平凡です。小麦粉、水、イースト、少しの油脂だけ。ブレーツェルにするのは焼く前にくぐらせる液で、家庭でよく使われる濃度では力が足りません。
まず重曹を焼きます。アルミホイルを敷いた天板で120°C、一時間。炭酸水素ナトリウムが炭酸ナトリウムに変わり、アルカリ性がずっと強くなります。熱湯に溶かすと、濃いマホガニー色の皮と、普通の重曹では届かないあの匂いが出ます。もう一つの選択肢は食品用の水酸化ナトリウムで、仕上がりは上ですが手袋とゴーグルが要ります。家庭では焼いた重曹のほうが現実的です。
→ ブレーツェル
薄く叩き、衣をつけたらすぐ焼く
シュニッツェルは三ミリから四ミリまで叩きます。この厚さなら片面二分ほどで火が通り、それが狙いです。衣が濃く色づく前に肉が仕上がります。
守ることは二つ。衣をつけたら間を置かずに焼きます。置いておくとパン粉が肉の水分を吸い、湿った層になって張りつきます。もう一つは油の量です。フライパンの中で肉が動くだけの油を使います。鍋を揺すって熱い油を衣の上にかぶせると、衣が膨らんで肉から浮きます。衣が肉に平らに貼りついていたら、油が少ないか温度が低かったということです。
→ シュニッツェル
パスタではなく団子です
シュペッツレは小麦粉と卵のゆるい生地で、パスタの生地よりホットケーキの生地に近いものです。専用の器具や穴あきのボウル、粗いおろし金から沸いた湯に直接落とすと、一分もかからず浮いてきます。
二回に分けてゆでます。鍋が混み合うと沸きが落ち、団子どうしがくっついて一塊になります。次にバターで仕上げます。泡立ちを過ぎてヘーゼルナッツの香りが立つまで焼いたバターに入れ、動かさずに置いて焼き色をつけます。ゆでてバターをからめるだけでも悪くありません。ゆでてから焼き色をつけたものが、記憶に残る食べ方です。
→ シュペッツレ
キルシュが法律で決まっているケーキ
ドイツではシュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテという名称が保護されていて、この名前で売るケーキには黒い森産の透明なサワーチェリーの蒸留酒、キルシュヴァッサーが入っていなければなりません。抜けばチョコレートとチェリーのケーキになります。それはそれで悪くありませんが、このケーキではありません。
薄いスポンジを三枚、温かいうちにキルシュをたっぷり打ちます。温かければ染み込み、冷めていれば表面に残ります。チェリーは甘いものではなくサワーチェリーを使い、自分の煮汁で軽くとろみをつけます。生クリームはゆるく角が立つところまで。固く泡立てるとスポンジに触れてざらつき、側面から滑り落ちます。切る前に冷蔵庫で四時間置きます。
組み合わせ方
オバツダと温かいブレーツェルは定番で、考えることは何もありません。ブラートヴルストにはマスタードと酸味のあるものを添えます。シュペッツレを添えるとシュニッツェルが一食分の夕食になります。人数分をまとめて作るなら、前日に仕上げておかなければならないのはケーキだけで、待つほどよくなるのもケーキだけです。









