おもてなし献立とは、作る人のふだんの平日ごはんではなく、招いた人を中心に組み立てる食事のことです。コースで何品か出すか、みんなで取り分ける料理をずらりと並べるか。そこに「今日は特別な日だ」と感じさせる主役の一皿を据え、ホスト自身も席に着けるだけの量を前もって仕込んでおきます。このガイドでは、誕生日やホームパーティー、家族のお祝いに向けた献立の立て方、料理の量の目安、世界各地のお祝いの食卓、そしてテーブルセッティングまでをまとめました。登場する料理にはすべて、詳しいレシピへのリンクを付けています。

キッチンに閉じ込められないおもてなし献立の立て方

お祝いの献立がうまくいかない理由は、たいてい同じです。どの料理も、最後の1時間にコンロを必要とするのです。コースの順番ではなく、タイミングで献立を考えれば解決します。

最後に手をかける見せ場の料理は、ひとつだけにしましょう。休ませる時間が必要なロースト、フライパンで仕上げるソース、次々に揚げる揚げ物などです。それ以外は、置いておいても平気な料理、むしろ時間がたつほどおいしくなる料理にします。冷蔵庫でひと晩おくと味がなじむサラダ、温め直せる煮込み、どのみち冷やし固める必要のあるデザート。目安は、直前に作る温かい料理がひとつ、前日までに仕上げておくものが2〜3品、ゲストが着いてすぐつまめるものがひとつ、です。

定番の構成はこうなります。

  • 最初の一杯と一緒につまむもの(ディップ、パイ、ピクルス、ブルスケッタ)
  • 前菜、またはサラダを数種類
  • メインを一品と付け合わせを2品(でんぷん質のものと、さっぱりしたもの)
  • デザート(できれば前日に作れるもの)
  • 水以外のノンアルコール飲料。運転する人、子ども、お酒を飲まない人のために

つまみには、ほうれん草とアーティチョークのディップフムスイタリアのブルスケッタスペインの生ハムのクロケッタなどが向いています。チポトレ風味のデビルドエッグは、朝のうちに詰めて冷やしておけます。

ゲスト1人あたり、どれくらい作ればいい?

ホストなら誰もが気になるのに、たいていのレシピが触れない問題です。以下は、何品か出るディナーで大人1人に対してケータリング業者が使っている実用的な分量です。一品だけの食事なら、およそ3分の1を上乗せしてください。

料理 1人あたり
骨なしの肉・魚(メイン) 生で180〜220 g
骨付きのロースト(ハム、ラムもも肉、丸ごとの鳥) 生で350〜450 g
でんぷん質の付け合わせ(じゃがいも、ごはん、パスタ) 調理後で150〜200 g
野菜の付け合わせ・サラダ 100〜150 g
食前のつまみ 小さなもの4〜6個
ケーキ 直径24 cmのケーキで10〜12切れ
パン 1〜2切れ、またはロールパン1〜2個
ワイン(出す場合) ひと晩で約半本

子どもは大人のおよそ半量を食べます。予定外のゲストに備えて必ず1人分多めに見積もり、翌日の残りものが喜ばれる料理を選んでおくと安心です。ゴルプツィ(ロシア風ロールキャベツ)ブフ・ブルギニョンラザニアは、どれも2日目のほうがおいしくなります。

家で祝う誕生日ディナー、何を作る?

誕生日の食事には、動かせない一点があります。ケーキです。ですから、ケーキから逆算して組み立てます。濃厚なケーキなら軽めのメインを。豪華なメインのあとには、酸味のあるケーキやふんわり軽いケーキが合います。

大人の誕生日なら、オーブン1台で8人をもてなすにはローストがいちばん簡単です。マイヤーレモンのラムもも肉ローストハニーグレーズドハム、あるいは定番のローストチキンを人数に合わせて倍量で。レストランのような夜にしたいなら、ビーフ・ウェリントンは前日に包んでおき、ゲストが来たら焼くだけ。ハーブ衣のラムラックはオーブンで20分です。

ケーキなら、メドヴィクナポレオンケーキがロシアの誕生日の二大定番です。どちらも冷蔵庫でひと晩休ませる必要があるので、ホストにはむしろ好都合。黒い森のケーキ(シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ)はドイツのパーティーケーキで、ティラミスはオーブンをまったく使いません。クリームチーズフロスティングのキャロットケーキチョコレートケーキなら、子どもにも大人にも喜ばれます。日本で誕生日ケーキといえば、軽いスポンジに生クリームといちごのショートケーキですよね。当サイトのストロベリーショートケーキは、同じ発想のアメリカ版です。

子どもの誕生日には、お皿に盛る料理より手でつまめる料理が向いています。鶏の唐揚げミニ・スマッシュバーガー、切り分けたキンパコシーニャ、そしてブラジルのブリガデイロ。ブリガデイロは、ブラジルの子どものパーティーに必ず並ぶお菓子です。

ゲストを招くディナーの献立:失敗しない3つの組み合わせ

どの献立も上のタイミングのルールに沿っていて、直前に作るのは一品だけです。

イタリア風ディナー。 食前酒にはカプレーゼアランチーニ。コンロの前でかき混ぜるのはきのこのリゾットだけです。続いてブランジーノ・アル・サーレ。魚を丸ごと塩の衣で包んで焼き、食卓で割って開けます。デザートは前の晩に作っておいたティラミス

フランス風ディナー。 トーストを添えた鶏レバーのパテオニオングラタンスープかグリーンサラダ、前日に煮込んで温め直すブフ・ブルギニョン、そしてクレームブリュレ。カスタードはひと晩で固まるので、当日は砂糖をバーナーで焦がすだけです。

東欧風のお祝い。 オリヴィエサラダ毛皮のコートを着たニシンは、どちらも冷蔵庫でひと晩おいたほうがおいしくなります。温かい料理は、冷凍庫から出してそのままゆでるペリメニチキンキエフ。デザートはメドヴィクです。

世界のお祝いの食卓

どの食文化にも、何が食事を「特別」にするのかについて独自の考え方があります。ディナーにテーマを持たせたいなら、どこかの国の伝統をひとつ借りてくるのがいちばん手軽です。

ロシア:全員が座る前に、料理はもう全部並んでいる

ゲストが来る前にすべて並べ終えたロシアのお祝いの食卓。クリスタルの器のオリヴィエサラダ、毛皮のコートを着たニシン、ピクルス、イクラをのせたブリヌイ、カラフェ
ロシアのザストリエでは、最初の乾杯の前に冷たい料理が食卓を埋めつくします。温かい料理はそのあとです。

ロシアのザストリエ(宴)は、すでに料理で埋まった食卓から始まります。冷たい前菜のザクースキは一度に並べます。オリヴィエサラダ毛皮のコートを着たニシンミモザサラダ、ピクルス、イクラのブリヌイ。何度か乾杯が済んでから、ようやく温かい料理の出番です。小さなココット皿で焼いた鶏ときのこのジュリエン、続いてメイン。よく出るのはフランス風の肉で、じゃがいもと豚肉のオーブン焼きです。ロシアの誕生日の食卓には欠かせません。締めくくりのケーキと紅茶は、何時間もあとになることもあります。ホストの腕前は豊かさで測られます。皿と皿のあいだにすき間のある食卓は、まだ準備の途中に見えてしまうのです。同じ料理の日常の顔は、ロシアの家庭料理ガイドで紹介しています。

ジョージア:スプラと乾杯の音頭取り

料理が重なり合うジョージアのスプラの長い食卓。アチャルリ・ハチャプリ、くるみソースの鶏肉、豚肉の串焼き、ハーブ、ざくろ、ワインの入った素焼きの水差し
ジョージアのスプラでは、新しい料理は前の皿を下げずに、その上へ重ねて置かれます。

ジョージアのスプラは、タマダと呼ばれる乾杯の音頭取りが仕切る宴です。タマダは伝統の順番に沿って乾杯を捧げていき、そこにはたいてい平和、家族、両親、そしてもう食卓にいない人たちへの乾杯が含まれます。皿は下げません。新しい皿を上に重ねていくので、良いスプラほど料理が層になっています。並ぶのは、卵黄をのせた舟形のチーズパンアチャルリ・ハチャプリ、新年や冬の宴に欠かせない鶏肉のくるみソースサツィヴィ、ぶどうの剪定枝で焼くムツヴァディヒンカリ、そして丸ごとかじる山盛りの生ハーブ。家でスプラを開くなら、サツィヴィとハーブの皿は前日に用意できます。ハチャプリは、ゲストが席に着いたらオーブンへ。

ドイツ:コーヒーとケーキ、ごちそうするのは誕生日の本人

ドイツで誕生日といえば、たいてい午後のカフェ・ウント・クーヘン(コーヒーとケーキ)です。外国人が驚くルールがあって、祝われる本人がケーキを職場に持っていき、友人を招きます。ごちそうしてもらう側ではないのです。豪華版は黒い森のケーキ。ドイツのお祝いのディナーはゾンタークスブラーテンやフェストタークスブラーテン、つまり日曜日や祝日のローストです。ビーフ・ルラーデン赤キャベツの煮込みを添え、11月には聖マルティンのガチョウ。南部ではケーゼシュペッツレが、肉を使わないお祝いのメインになります。地方ごとの違いはドイツ料理ガイドで解説しています。

イタリア:長い日曜日のランチ

ぶどう棚の下に置かれたイタリアの家族の長い食卓。ラザニア、前菜、生ハムやサラミ、パン、ワインのカラフェ
イタリアのお祝いの食事はたいてい夕食ではなく昼食で、アンティパスト、プリモ、セコンド、ドルチェの順に進みます。

イタリアのお祝いは夕食より昼食であることが多く、順番もきっちり決まっています。まずアンティパスト、次にプリモ(パスタかリゾット)、そしてセコンド(肉か魚)とコントルノ(別皿で出す野菜の付け合わせ)、最後にドルチェとコーヒー。ラザニアのようなオーブン焼きのパスタは前もって組み立てておけるので、お祝いのプリモの定番です。セコンドにはブランジーノ・アル・サーレかロースト、デザートにはティラミスカンノーリ。もっと知りたい方はイタリア料理の定番レシピをどうぞ。

フランス:コースと、デザート前のチーズ

フランスのお祝いのディナーはコースで進みます。小さなおつまみを添えたアペリティフ、アントレ、プラ・プランシパル、チーズ、そしてデザート。チーズは必ず甘いものの前で、あとに出すことはありません。パンはパン皿ではなくテーブルクロスの上にじかに置き、料理をフォークに寄せるのに使います。家でフランス風の献立にするなら、華やかな一皿目にはロブスタービスクブイヤベース鴨のコンフィは数日前から作っておけます。みんなの視線を浴びながら仕上げるのが好きなら、締めはチョコレートスフレで。技法についてはフランス料理完全ガイドで解説しています。

日本:おせちの重箱と、お祝いのケーキ

重ねた漆塗りの重箱に詰めたお正月のおせち料理。伊達巻、黒豆、海老、野菜の煮しめ
おせちの一品一品には願いが込められています。黒豆は健康、海老は長寿、伊達巻は学問の成就を願って。

日本でいちばんのお祝いの食事といえば、やはりおせち料理です。漆塗りの重箱に詰めて、年明けの数日間にいただきます。一品ごとに意味があり、黒豆は健康を、腰が曲がるまで元気でいられるようにと海老は長寿を、そして卵焼きの仲間である甘い伊達巻は学問を願うものです。誕生日はもっと気軽で、主役はいちごと生クリームのショートケーキ。家で和風のディナーを開くなら、上品な前菜に茶碗蒸し、温かい主役に天ぷらを。食卓のほかの料理については日本料理ガイドで紹介しています。

韓国・中国・インド:長寿の麺と、大人数のためのごはん

韓国では誕生日の朝をわかめスープで迎えます。祝宴チャンチには、春雨と野菜のチャプチェと、骨付きカルビの煮込みカルビチムが欠かせません。中国では誕生日に長い麺を切らずに出します。その長さが長寿を表すからです。お祝いの席の魚も、頭付きの丸ごとで出します。豚肉とキャベツの餃子のような餃子は、春節の料理です。インドではチキン・ビリヤニが結婚式や親族の大集合の定番。ひとつの鍋で何十人分も作れるからです。

メキシコ・スペイン・ウズベキスタン:みんなで囲む大鍋ひとつ

切り紙のガーランドの下、中庭に置かれたメキシコのフィエスタの食卓。モレ・ポブラーノ、赤いライス、とうもろこしのトルティーヤ、ワカモレ、アグア・フレスカ
モレ・ポブラーノは作るのに丸一日かかります。だからこそ、結婚式や洗礼式、誕生日に出されるのです。

一品を大量に作って祝う料理文化もあります。メキシコならモレ・ポブラーノ。乾燥唐辛子、種、スパイス、チョコレートで作るソースで、結婚式や家族のフィエスタで出され、みんなにはアグア・フレスカがふるまわれます。スペインではパエリア。日曜日に家族が集まると、屋外で炊き上げます。ウズベキスタンでは結婚式のために巨大なカザン鍋でプロフを作り、男性のための朝のプロフは、それだけでひとつの伝統になっています。3つとも、椅子の数よりゲストのほうが多いときに作りたい料理です。

アメリカ:ホリデーの食卓

感謝祭でもクリスマスでもイースターでも、アメリカのお祝いの食卓はローストと長い付け合わせのリストでできています。ハニーグレーズドハムグリーンビーン・キャセロールピーカンのストロイゼルをのせたスイートポテト・キャセロールコーンブレッドデビルドエッグ、締めはピーカンパイチーズケーキ。付け合わせはゲストが持ち寄る担当で、ポットラックはごく普通のことです。「何か持っていこうか?」と聞いたなら、本当に何か持っていくべきです。

テーブルセッティングの正しい方法

正式なテーブルセッティング。位置皿とディナー皿にナプキン、左にフォーク2本、右にナイフとスープスプーン、上にデザート用カトラリー、パン皿とグラス3つ
カトラリーは外側から使うので、料理が出てくる順に並べます。

テーブルセッティングは複雑に見えますが、筋はひとつだけです。カトラリーは外側から内側へ、料理が出る順に使います。

  • フォークは左、ナイフとスプーンは右。 ナイフの刃は皿のほうに向けます。スープスプーンはナイフの外側に置きます。
  • デザート用のカトラリーは皿の上側に置き、 スプーンの柄は右向き、フォークの柄は左向きにします。こうすると、それぞれの手で自然に取れます。
  • グラスはナイフの上に。 水のグラスをナイフの先にいちばん近く置き、ワイングラスは使う順に右へ並べます。
  • パン皿は左上に置き、 小さなバターナイフを横に渡します。
  • ナプキンは皿の上か、フォークの左に。 カトラリーの下には敷きません。
  • ゲスト1人あたりテーブルの縁を約60 cm取り、 肘がぶつからないようにします。テーブルクロスは縁から20〜30 cm垂らします。
  • センターピースは低く、 30 cmくらいまでに抑えると、ゲストがテーブル越しに顔を見て話せます。背の高いキャンドルでも、細ければ問題ありません。
  • 並べるのは献立に必要なものだけ。 2品のディナーにフォーク3本は、優雅というより間違いに見えます。

ビュッフェは、人が皿に料理を取る順に並べます。まず皿、次にサラダ、メイン、付け合わせとソース、最後にカトラリーとナプキン。こうすれば、フォークを持ったまま料理を取る羽目になる人がいません。12人を超えるなら、テーブルは両側から回れる場所に置きましょう。

お祝いの席のマナーも、国によって違います。日本では、ごはんに箸を立てず、箸置きに置きますね。葬儀のお供えを思わせるからです。中国南部では、丸ごとの魚を皿の上でひっくり返しません。漁師の家にとって、魚を返すのは船の転覆を連想させるからです。ジョージアのスプラではタマダの音頭を待ってから飲み、ロシアでは最初の乾杯をホストが捧げます。

ホストのためのタイムライン

  • 2〜3日前: 買い出し、ブイヨンやソース作り、ケーキのスポンジ焼き、グヤーシュブフ・ブルギニョンなどの煮込み。
  • 前日: ひと晩でおいしくなるサラダを仕上げ、カスタードやケーキを冷やし固め、肉をマリネし、テーブルクロスにアイロンをかけてテーブルをセットする。
  • 当日の朝: 野菜の下ごしらえ、ディップ作り、飲み物を冷やす、バターとチーズを冷蔵庫から出しておく。
  • ゲスト到着の1時間前: ローストをオーブンへ。つまみをテーブルに出し、キャンドルは置くだけで火はまだつけない。
  • ゲストが到着したら: 飲み物とつまみを出し、直前に作る一品を仕上げ、前菜を食べているあいだにローストを休ませる。

こう段取りしておけば、ホストもゲストと一緒に食べられます。お祝いの食事は、そのためにあるのですから。